Sophia's Secret (The Winter Sea) [英語多読]
しばし心も頭もスコットランドの海辺をさまよっている間に、季節はすっかり夏に。見上げれば空の青さが一段と濃くなっていた。
ということで本日も多読報告。818冊目。
初めての作家だが、ジャコバイトの乱がテーマと知り即買い即読。期待通りの作品で、大満足。お気に入りの作家が増えた。
作家のCarrieは、1708年のジャコバイト侵攻の話を書こうとフランスで取材・執筆しているが、スコットランドに住む友人を訪ね、そこでジャコバイト運動の拠点の一つであるSlains城を見て強く惹かれるものがあり、城のある Cruden Bayに移り住むことにする。自身の先祖であり、1700年当時を生きたSophia McClellandの名前を物語の語り手となるヒロインと決め執筆を始めるが・・・。ストーリーは現代の世に住むCarrieの生活と、彼女の書くSophiaのお話しとがパラレルに語られていく。
本作でCarrieが執筆しようとしているジャコバイト運動は1708年の侵攻のことで、”the Fifteen” や”the Forty-five” のような大きな反乱には至らず、不成功に終わった数々の企ての中の一つ。作中でも語られているように準備・タイミング等完璧だったにもかかわらず、James三世がスコットランドに上陸することはかなわなかった。この時のみならず、結局ジャコバイト運動は実を結ぶことはなく、スチュアート家の王が復活することはなかったことを歴史から我々は知っているわけで、作中作のヒロインSophiaや周りの人々の行く先にあまり明るい未来は無いと思うとはらはらしてしまうのだが、我らがヒロインSophiaはその混乱の中、胸を張って前に進んでいく。
この作中小説では、ヒロインSophia以外の主要人物はすべて実在の人。事の隠密性からあまり資料が残っていないとのことだが、歴史上の事実とフィクションの部分が上手くかみ合っていてhistorical story の面白さが大変良く出ている。
舞台になっているSlains城はBram Stokerが『ドラキュラ』を書くインスピレーションを得たことでも有名。読後、このお城の写真を探していたら作者のHPに行きついて、お城だけでなく作品に登場するCruden Bayのホテル・パブなどの写真も掲載されていた。これを見てから読んでいれば、と悔まれる。この写真の中にはSlains城の窓から海を望む写真もあり、Sophiaがいつもこの海を見てフランスからの船を待っていたこと思い出し、また切ない想いが甦ってきた。
オリジナルタイトルは “The Winter Sea”